カフェモカを飲むたびに、僕は少しだけ不思議な気分になる。 コーヒーとチョコレート。この二つは本来、それぞれ別の人生を歩んでいたはずだ。片方は苦味を背負い、もう片方は甘さを抱えている。それなのに、カップの中では妙にうまく折り合いをつけている。長年連れ添った夫婦みたいに。 午後三時過ぎの店内は静かだった。エスプレッソマシンの蒸気だけが、ときどき短い溜息をつく。僕はカウンター席に座り、カフェモカをひと口飲んだ。 甘い。 そしてそのすぐ後ろから、コーヒーの苦味がゆっくり追いかけてくる。 人生で起こるたいていのことは逆だ。苦い出来事が先に来て、あとから少しだけ甘い意味が見つかる。だからカフェモカは、現実より少し親切な飲み物なのかもしれない。 窓の外では信号が青から赤に変わり、人々が流れていく。急いでいる人もいれば、どこへ向かうのかわからない人もいる。たぶん本人にもわかっていない。 僕にもそんな時期があった。 何かを探していた気がするけれど、それが何だったのかは思い出せない。ただ、夜遅くまで開いている喫茶店でコーヒーばかり飲んでいたことだけは覚えている。 その頃の僕が今ここに現れたら、きっと同じよ
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カフェモカを飲むたびに、僕は少しだけ不思議な気分になる。 コーヒーとチョコレート。この二つは本来、それぞれ別の人生を歩んでいたはずだ。片方は苦味を背負い、もう片方は甘さを抱えている。それなのに、カップの中では妙にうまく折り合いをつけている。長年連れ添った夫婦みたいに。 午後三時過ぎの店内は静かだった。エスプレッソマシンの蒸気だけが、ときどき短い溜息をつく。僕はカウンター席に座り、カフェモカをひと口飲んだ。 甘い。 そしてそのすぐ後ろから、コーヒーの苦味がゆっくり追いかけてくる。 人生で起こるたいていのことは逆だ。苦い出来事が先に来て、あとから少しだけ甘い意味が見つかる。だからカフェモカは、現実より少し親切な飲み物なのかもしれない。 窓の外では信号が青から赤に変わり、人々が流れていく。急いでいる人もいれば、どこへ向かうのかわからない人もいる。たぶん本人にもわかっていない。 僕にもそんな時期があった。 何かを探していた気がするけれど、それが何だったのかは思い出せない。ただ、夜遅くまで開いている喫茶店でコーヒーばかり飲んでいたことだけは覚えている。 その頃の僕が今ここに現れたら、きっと同じよ
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